あの国の大統領選挙について

先日行われたアメリカ合衆国大統領選挙の結果とその前後に関することについて、取り敢えず私見を述べてみる。

 

まず、結果については、事前に予想を表明しなかったからには、後付けでどうにでも言えるのでは、という批判を覚悟で触れると、少なくとも二者択一の段階になった以降は、私的にはトランプ氏を強く支持していたものの、正直に言うと当選は難しいのではないかと思っていた。それは、ヒラリー氏がまともかつ有力でトランプ氏がまともでなく支持が足りないからということでは全くなく、むしろトランプ氏の支持の方が実際的には強かったとしても、隠れた敵対する巨大な力によって歪められて当選を阻まれてしまうのだろう、と思っていた。同じような主旨のことはウィキリークスのアサンジ氏も事前に述べていた。

 

実際に敵対する勢力が主にマスメディアを使って不公平で不公正に反トランプキャンペーンを展開したことは既成の事実であろうし、証拠が明白ではないが一部で噂された票操作による不正選挙の真偽は別にしても、少なくともトランプ氏が大統領には不適格というレッテルを世界中(とはいえ現実には西洋とその同盟国に限られるのだろうが)で貼ることに成功したにもかかわらず、思惑通りの結果にならなかったということは、いかにヒラリー氏の支持が相対的に低過ぎたかということの表れであり、見誤られ過小評価された支持差のギャップを埋めるほどのエネルギーは注がれなかったということだろう。

 

色んな角度からの情報を冷静に分析すれば、選挙戦におけるトランプ氏の支持集会への動員や盛り上がりに比べて、ヒラリー氏の集会の動員の乏しさは顕著であったことに気づかない方が難しい。頻繁かつ執拗に報道され続けたトランプ氏の暴言?は彼の長い演説の中のごくごく一部を切り取って効果を施した悪意のある編集演出であった反面、彼のまともな言動がマスメディア上で黙殺されている事実は現地の多くの人たちが伝えていたし、彼の訴える政策に関しても、人種差別的とされる事柄だけが取り沙汰され、彼がヒラリー氏に比べずとも目を見張って平和志向なことは、ここ日本においてはほとんど伝えられていない。むしろどういう論拠か彼が大統領になろうものなら核戦争の可能性が高まるというイメージさえ植え付けられてしまっており、何と私の中学二年生の子どものクラスでは、トランプ氏の当選のニュースに対して大多数が失望し、戦争の近まりを口にする子が少なくなかったというのだから驚きである。

 

私自身、トランプ氏を支持した理由の一定の部分が彼が示した方向性への賛同であったと同時に、一定部分はヒラリー氏にどうしても当選して欲しくないという相対的なものだった。これもまたここ日本ではほとんど表舞台では報道されていないばかりか、本場のアメリカ合衆国においてさえ情報の拡散は乏しかったようだが、ヒラリー氏という人物はISISというテロ組織の誕生を促し、中東や北アフリカでの米国主導による偽クーデターや戦闘行為を大いに助成し、結果的に今でも世界の複数地域で継続している紛争や混迷において一般市民が犠牲になり続けていることの原因に大きく加担している。それは当然ながら彼女が搾取的な金融資本や軍産複合体の利益に浴し仕えているためであり、そういった巨大な企業をスポンサーにしている彼女の立場としては操作的な国際緊張が導く軍拡と実戦による兵器の消費増大、軍事的優位を前提とする外国地域での米国資本の利権取得の下地作りが必須の仕事なのは明白である。ヒラリー氏があまりにも無慈悲な人間だという事実は日本のマスメディアは無知か圧力による偏向かのどちらかの理由から、一切報道することはない。アメリカ政府が継続しているロシアという進化的な国とその指導者であるプーチン大統領の悪魔化という嘘のプロパガンダにも、日本のマスメディアは従順に追随し、ヒラリー氏がプーチン氏をヒトラーだと評したことは批判もなく伝えても、なぜアメリカが真実をねじ曲げてまでもロシアに敵対したいのかという分析がなされることは無い。今回のアメリカ大統領選においてロシアがハッカー攻撃などにより親ロシア的なトランプを勝たせるよう某略を働いているという、アメリカ政府の常習犯的な嘘にも懲りずに事実かのごとく援護報道している。ちなみにその疑惑に関するロシア政府からの証拠提示の要求に対しアメリカは黙ってとぼけている。

 

つまりトランプ氏の資質や政策の隅々においての不安の問題が取るに足りないほど、ヒラリー氏の大統領選出を免れたことによって、戦争の拡大が回避され、遠くの国の子どもたちを含む多くの一般市民の無残で無慈悲な死傷が回避できたということである。それでもまだあなたたちの多くは、世間のトランプ批判に付き合い続けるのだろうか?

 

トランプ氏が選挙戦中に訴えていた政策が実際にはどの程度実行されるかは疑問だ。しかし大金持ち故にスポンサーが不要だった彼が、真剣に非富裕層の利益を追求するならば、自ずとその利益を損ねられる富裕支配層の阻止活動が立ちはだかることになり、歴史の例に倣うならば、彼が見えざる巨大な力により暗殺される可能性は低くない。